美術館について

美術館評価制度

横須賀美術館評価委員会(平成24年度第3回)

日時:平成25年3月13日(木)午後2時~4時
場所:横須賀美術館 会議室

1 出席者
     委員会 委員長    小林 照夫    関東学院大学名誉教授
         副委員長   菊池 匡文    横須賀商工会議所事務局長
         委員          柏木 智雄    横浜美術館学芸グループ長
         委員          久保 由樹    観音崎京急ホテル社長
         委員     黒岩 弘明    横須賀市立北下浦小学校校長
         委員     原田 美穂子   市民委員

     事務局 美術館運営課長         佐々木 暢行
         美術館運営課広報係長      吉田 紀彦
         美術館運営課管理運営係長    三堀 明枝
         美術館運営課(広報係)     遠藤 創太郎
         美術館運営課(学芸員)     沓沢 耕介

2.議事
       (1)平成25年度事業計画書案について

3.会議録(要約版)
(開会)
小島委員は所用により欠席です。
また、館長・教育委員会教育総務部長は市議会開催中のため欠席させていただきます。
本日の傍聴者は1名です。

(美術館運営課長あいさつ)
本日は平成25年度の事業計画案を審議していただきます。
以前頂戴したご意見も盛り込みつつ、集客を意識した事業計画案となっております。
特色としては、妖怪展や参加型の展覧会を開催するなど、幅広いニーズに応えられる計画となっております。
なお、横須賀市経済部が主催する特別企画展に関しましては、本年度2回開催いたしますが、現時点では25年度も1回開催が予定されております。

[小林委員長]:評価委員会は本音で話したほうがのちのち美術館のためになるので、忌憚無くご意見をお願いしたい。

[事務局]:       (資料説明)

[小林委員長]:委員の皆様からご質問がありましたらどうぞ。

[黒岩委員]:1番の「美術を通じた交流を促進する」のところでお伺いしたい。今回、美術館を市の都市資源として活用するために集客を意識して策定したということで、書かれていますけれども、「美術を通じた交流」という部分で、今回1番の「集客を意識した展覧会の実施」の中に、経済部特別企画展というのが入っています。平成24年度には入っていなかったわけですけれども、この内容がよくわからないのですが、美術を幅広く捉えた内容として、美術館で行う展覧会として、2万人というのをここに入れることが内容として適当なのかということと、前回これが入っていなくて、10万2千人で7つの展覧会を行っていたわけです。そのへんが、24年度と比べたときに10万8千人、6千人増になっているのですが、その辺の集客の部分の捉え方を教えていただければ。

[事務局]:まず、経済部特別企画展につきましては、平成25年度、私どもの企画展一本分の予算を落としております。それを経済部で予算要求をしまして、そちらのほうで、試行の事業の主体となって動いていただく、というかたちになっております。
昨年度、この委員会でもご指摘いただきましたように、美術館を利用してやる以上は、それを評価の中にいれるべきではないか。これはもちろん内部でも協議いたしました。
そういった結果の中で、この中にいれて評価はすべきだろうと。
ただ、今回の美術を通じた交流を促進する、というところにはテーマとして載せさせていただいているんですけれども、2番目の「美術に対する理解と親しみを深める」については、特別企画展の内容等がまだ定かでないものですから、こちらのほうの評価の中には入れていないと。ちょっと考え方として整合性はとりにくいところですが、そういう状態になっているというところでございます。

[黒岩委員]:2番には入っていないけれども、展覧会としては集客の部分に入れているという捉え方ですね?

[事務局]:そうです。これから内容が出てきた場合に、2番の中に修正して、評価に入れるかどうかについては、検討させていただきたいと考えています。

[黒岩委員]:24年度はラルクアンシエル展がありましたね。実際どのくらいの集客があったのですか。

[事務局]:ラルクアンシエル展につきましては、23,226人の集客となっています。この展覧会について大きかったのは、単純に人数もあるのですが、全員が有料観覧者であった、というところが確かに大きいのかなと。私どもの展覧会ですと、四割くらいは無料観覧者、中学生以下は無料なので当然無料の方がけっこう多いですけれども、そういったところの差が多少出ているかと考えています。

[黒岩委員]:24年度の美術館の集客にもしラルクを加えたとしたら、12万人達成しているということになる?

[事務局]:そういうことになると思います。今週土曜日から、「70’sバイブレーション」というのが始まるのですけれども、これも載せた数字だと、その位に行くのではないかと思われます。

[小林委員長]:いま、黒岩委員の質問に対して事務局側から説明がありました。この前のときには、美術館の意向が反映されてなかったではないかと、いろいろ指摘があり、やはり集客力をあげる意味で、経済部からの働きかけというのはたいへん重要なのですが、いま一番大事なのは、せっかく横須賀美術館として、行政を担当している人も、学芸員の人も、ひとつの理念をもってやっておられると思うんですね。ですから、やはりイニシアチブは常にとらないと、建物だけの美術館になってしまったら存続の意味がないと思いますので、おそらく黒岩委員も、そういうことを含めてお話しになったと思いますので、やはり美術館がイニシアチブをとって展開していただきたい。そのうえでお客さんが来るということを心がけていただきたいと思いますね。

[事務局]:ご意見ありがとうございます。我々としましても、教育委員会に所属する横須賀美術館として、一義的に社会教育施設だ、ということは当然念頭において取り組んでおります。ただ、都市資源としての活用を求められているというのも事実としてあると。そうした中で、バランスを考えながら、ただし一義的には社会教育施設だということを念頭において、運営していければと考えております。ご意見ありがとうございました。

[小林委員長]:よろしくお願いします。どうぞ、他にご意見がありましたら。

[柏木委員]:今のことに関連して質問です。経済部の特別企画展というのは、美術館の予算から企画展1本分の予算を要求からはずして、経済部のほうで予算要求をされて、展覧会を作られるということですが。前年度のラルクアンシエル展は、ほとんど貸し会場みたいなものだったのですか?

[事務局]:ラルクアンシエル展につきまして、手続き上は教育委員会が使用承認をして、経済部が主体となって実際の運営を行うイベント、というか企画になっております。
それに関しては美術館条例の適用外、という判断で動いておりますので、負担も民間事業者が持つ代わりに、そこで赤字となったリスクも負う、というやり方をしております。
24年度については、多少光熱費など掛かっておりますけれども、それ以外の費用については掛かっていないという事業になっております。

[柏木委員]:目的外使用ということですか?

[事務局]:目的外使用許可ですと、行政処分になりますので、例えば市民の方から申請があれば、当然行政処分として目的外使用許可という形になるのですけれども、市の内部での貸し借りにつきましては目的外使用承認という取扱基準がありまして、それに基づいて行ったものになります。

[柏木委員]:いま伺ったお話しですと、収支に関して美術館には何も入ってこない代わりに、リスクも負わない。しかしランニングコストがあるはずで、これが結構大きいはずですね。どの程度までランニングコストを入れておられるのかわからないのですけれども。収支は全く度外視しているけれども、ランニングコストだけただ出て行くということならば、美術館にとって、経営の面で果たしてそれがいいのかどうか?と私は思います。
それから、2番には入れていないということですが、市民の方の満足度というのはやはり量る必要があるわけで、美術館の事業計画に載っている以上は、この事業に対して市民の方がどういう満足度を持ったのか、ということについては、きちんと検証されるべき。もしかしたら、経済部でされるのかもしれませんが、美術館の事業計画に載っている以上は美術館でも検証が必要で、その結果を見て、事業が適切か適切でないかということを美術館としても判断すべき、と思います。やはりここは整合性がきちんととれないと、事業計画としては望ましくない、と私は思います。

[事務局]:1点目のランニングコストにつきましては、今回のラルク展を行なったときは、1階で国吉康雄展をやっているときに、地下の常設スペースで行なっていましたので、そこにかかる経費については、ラルク展の実施、非実施に関わらずかかる経費だ、という考え方でいたのは事実です。
2点目の、こちらのほうでも満足度の把握をやるべきだ、というご意見につきましては、ご意見のとおりと思います。ラルク展につきましても、アンケート調査は当然行なっておりますので、満足度等は私どもでも把握しております。ただ、評価の中に③「調査研究の成果を活かし、利用者の知的欲求を満たす」というところに入れるのが適切なのかどうか迷った、というところでございます。

[柏木委員]:調査研究の成果を活かした事業がメインになってくる、ということですね?

[事務局]:一義的にはそう認識しております。

[柏木委員]:館の経営上の理由で、市の方針などがあって、いろいろな取り組みをやらなければいけないということは理解しておりますけれども、それを美術館としてどう適切に組み込んでいくのか、という対応を求められる。いまはどこの美術館でも求められることだと思いますので、よく検証された方が良いと思います。
ランニングコストの問題にしても、コレクション展の方で既にランニングコストがかかるというお考えもあるかもしれませんけれども、そこの空間に人がどれくらい来るかということだけでも、ランニングコストの算定数値が大きく変わってくるはずですので、相当シビアに費用対効果のことを考え、経済部さんとも話をなさって、館としてきちんと意見を表明すべきだと思います。

[事務局]:ありがとうございます。

[原田委員]:たまたま数日前ですけれども、新聞の中に入っていた折込に、「町を愛すればこその苦言」ということで、角井(市議)さんという方が短い記事を書いていて、美術館にも来館されて、「アートを拡大解釈し、集客施設としての活用に舵を切っているが、長期的に見れば美術館としての格や価値を下げてしまう。作品や展示といった本流で勝負すべき。今度の音楽の企画展も、美術館でやる意義が果たしてあるのか」というふうに書かれているのですけれども、一般の市民の方も、このことについて疑問に思っている方がいらっしゃる、ということをわかっていただいたほうがいいかな、と思いました。前回、けっこう言ってしまったのですけれども、私だけではなく、そういう考えをお持ちの方もいらっしゃるのだなと思いました。

[小林委員長]:きちんとした扱いが重要になると思いますので、よろしくお願いします。

[菊池委員]:まず、25年度の事業計画が、このタイミングで出されたのは初めて。
年度計画が前年度中に示されたのは初めてのことで、それは、正常なかたちをとっていただいたということで評価したい。というか、当たり前の状態になったということ。
そういう位置付けで見させていただく環境が整ったということについては、ありがとうございます。
体裁の問題として、いきなり1ページに各項目ごとの計画が寄せ集めのような形になっている、横串で全体の方向性が見えない、ということを以前指摘させていただき、今回、1ページの前段に使命とか目標が記載され、配慮をいただいたことは大変よろしいと思います。
その中で、いわゆる美術館の使命や目標というのは普遍的なもので、25年度に限ったことではない。いってみれば大義ですから、最上段に載せるのではなく、やはりあくまでも25年度のコンテンツですので、一番下の欄にある「平成25年度横須賀美術館の事業計画について」というのが前面に出ていて、下のほうに使命と目標というのが小さく囲われて示されるという形が良いのかな、と思います。
また、事業計画についてという文章の中身についても、もう少し意気込みが示されると良い。なんだか解説みたいな感じになっている。これだと25年度に、美術館がどのような方向性をもって、どういう美術館にしてお客さんを迎え入れるのか、が見えにくい感じがします。もう少し、書くのなら書き振りをきちんと伝わるような形にしていただききたいと思うのと、「平成25年度横須賀美術館事業計画について」というような解説的なタイトルではなく、この中に文章として書いてあるものを凝縮した25年度事業に対する意気込みのタイトル、例えば「幅広いテーマ設定により、訪れたい美術館に」とか、25年度を美術館全体でどう演出して、お客さんをどう呼び込もう、どう楽しませようとしているのかが、一言でわかるような、キャッチコピーではないですが、意欲が伝わるような文言があったほうが良いと思います。

[小林委員長]:横須賀美術館事業計画について、何年度の、というような言い方ではなくて、もっと訴えるべきものを中心に出したかたちで、おやりになればいいですね。それから、自信を持って書かれたらいいと思います。美術館を都市資源として活用するために、しかし都市資源そのものがまだよくわからないというのもありますから、どういう都市資源として美術館を位置付けようとしているのか、もう少し突っ込んでもらったほうが、迫力がでてくるので。そういったことを菊池委員は述べていると思いますので。よくまとまってはいますが、委員の人はより高いものを求めていますので、よろしくお願いします。

[菊池委員]:特別展の扱いについて中身を見ますと、美術館として相当逡巡しながら位置付けを考えられてるいるな、と如実に伝わってきます。なぜその逡巡が目立ってしまうのか。8ページの上のほうに「目標設定の理由」というのがありまして、「平成25年度は経済部による展覧会が1回含まれるため、それを除く5回の企画展の満足度を対象とします」とか、それでこの事業計画の企画の半分の81パーセント以上で、という形で。あまり無理しないで特別展は特別展で抜き出しても良いと思います。社会教育施設としての企画展の大義があって、それに基づいた仕掛けがあって、どういった人たちに訴えかけるかというのはそれによって違うわけで。仮に来年度、ラルク展のような企画をやれば、全く対象も違うし目的も違う。来る人たちは限られているわけで、それこそラルクを知らない人は来るわけが無い、そういう性質ですよ。そのアーティストを心から愛する人たちのためにやって、それだけのパイがあるから集客効果があるだろう、ということでやられたので、その結果が23,000人というふうに現れている。成功というなら成功と捉えてもかまわないのですが、同じようなものをやったときに、それをこの中に一緒に入れ込むというのは、やはり非常に無理がある。ただし柏木委員も言いましたけれど、美術館としてのイベントであることは厳然たる事実であって、経済部がやろうが美術館がやろうがお客さんには関係ない話であって、美術館がやってるとしか見えない、という認識は絶対に必要です。美術館としても、経済部がやるもの、余所のイベントという考え方でいると、大怪我をしますよ。そういったところをきちんと整理すべきだと思います。やはり美術館でやるものは、どこが担当しようが、美術館の大義のもとに美術館なりの評価の対象だとか、狙いだとか、演出だとかを盛り込まないと、アイデンティティが全く無くなるということになります。明確性がないので、我々が評価するときにこのままでは評価できない、ということになりますので、いま言った姿勢のもとに見直していただきたい。

[小林委員長]:集客力は増えたけど、横須賀美術館の意味は失われてしまうなど、間違えると大変なことになってしまう。美術館の事務や学芸員の方々がどういうふうに考えているのかということを優先していかないといけない。菊池委員、柏木委員のおっしゃったことは大変重要なことと思いますので、そこを頭に入れて企画を考えていただければと思います。

[菊池委員]:3ページ、広報・パブリシティに関しては、ここ数年いろいろな形で関係機関と連携をとりながら、非常に露出度の高い広報活動、パブリシティ活動を進められていると思います。それにプラスして、中段から下にあるツイッターを活用するに関連して、フェイスブックなども開設していくと良いのかな、と思っています。
もう一つは、市内在住の方を含めて、外国人の誘客をどのように考えておられるのか伺いたい。

[事務局]:積極的に外国人の方の誘致、という視点は持っておりませんでした。いままでにベースのほうから話を頂戴したことは何度かありました。積極的に進めていくべきだったなというのは、いま意見を頂戴して思いました。

[菊池委員]:お金の問題や誘導ルートなど諸々あるのですが、やはり横須賀らしさという意味でいえば、外国人の方へのもてなしが美術館にないというのは、いかがかなという感じがしました。
一つヒントとして言えるのは、外国人はフェイスブックを見ていますから。フェイスブックでの広がりというのは、ものすごく効果がある。この美術館が外国人を歓迎する美術館という前提ですが、フェイスブックで情報発信すれば、かなりの人が来てくれるのではないか、という想定はあります。
もう一つは、スピード感の問題です。
まず13ページ、「利用者にとって心地よい空間とサービスを提供する」というところですが、「スタッフ対応に関する来館者アンケートについては、他館のアンケート事例を調査研究していきます」とあります。この点、アンケート項目も1項目しかないのでは中々測りきれないということを申し上げて、他の美術館なども参考に勉強されたらいかがですかと、何度もご指摘をさせていただいたのですが、25年度においても調査研究の段階を示されているということは、改善について何か大きなハードルがあるのかな、と感じました。大事なところなので、もし改善ができない、お客様の満足度を幅広くつぶさに感じるための手法が考えられないのであれば、例えば学生との連携、総合高校とか専門学校、諸々ありますが、美術館と関係あるところとタイアップして、学生を活用して聞き取りアンケートを一定期間やるなど、そういったことによって日常のアンケートとは違った幅広いお客様の満足度の調査をしてみるとか、そういうアクションがなくては、アンケートを調査研究しても、いつまで経っても全く変わらない。要するに変わろうという意思がないのかな、と思うくらいで、変えようと思うのであれば、お客様がどう思ってるかというのは気になるところで、そこで自分たちが気づいていないような指摘をされたらすぐ直すことが、満足度の向上につながっていく一番の対策であって近道だと思います。そういった意味で、ボランティアによる聞き取り調査でも良いかと思います。お客様の時間もありますので、ベンチで寛いでいる方とか、恐らくいろいろなご意見を頂けると思います。
もう一つ、17ページです。ここも、毎回逡巡されているのがわかります。
他の一般的な美術館の運営に関する財務諸表だとか、参考になるものがあれば、と言ったのですが、なかなか集められず、こういったことになっているのかもしれませんが。
事業計画と目標達成の整合性が取れていない。事業計画において、効率的な開館時間の設定というのは経費削減という意味合いの設定なのか、新規歳入増の取り組みということで事業計画にあげていることは具体的には何をやろうとしているのか、計画がある以上予算が付いてきますので、新規歳入増の取り組みと事業計画に謳ったのであれば、それに予算がリンクするわけです。当然具体的な施策がなければ、予算が立てられない。
効率的な開館時間の設定というのがよくわからないのと、新規歳入増の取り組みは具体的に今の段階でどういうことを考えているのか、伺いたい。

[事務局]:では開館時間等につきまして、ご説明します。美術館条例で、開館時間が6月から9月までの土曜日は8時までと決まっておりますが、6時から8時までの来館者が極端に少ないということで、25年度につきましては、一年を通して閉館時間18時とさせていただくことで、光熱水費ですとか、委託料、展示監視、受付、掃除等の経費を節約させていただければと考えています。
新規歳入増の取り組みについて、具体的に達成目標のほうに組み込めなかったのですけれども、具体的な案としましては、業者さんと話が付いていない状態なのですけれども、HPのバナー広告を募集させていただこうかと考えております。
あと一つ、ワークショップについて、一部材料費をいただいているケースもありますが、無料で開催させていただいているワークショップについて、材料費等ということで参加者から、まず大人向けのワークショップのから手を着けさせていただいて、大体1000円程度集めさせて頂ければ、と考えております。

[菊池委員]:バナー広告の募集というのは今一つわからないですけれども、効率的な開館時間の設定については具体的に明示したほうが良いのではないですか? 効率的なといっても、流動的な面もありますので。

[事務局]:条例がまだ改正できないでおりますので、教育委員会において特別な理由があると認めるときは条例の開館時間を変更できる、という形式での運用をさせていただく方向で考えております。まだ、明記できない部分がございます。

[菊池委員]:達成目標の「観覧者1人あたりの決算額を前年度比5%減とする」。この決算額は、総事業費ということですか?

[事務局]:総事業費で考えております。

[菊池委員]:大丈夫ですか? 捉えられます? というか、捉え切れます? 、というのは、決算額前年度比5%減とする、という年間の設定目標を掲げるのは構わないのですが、総事業費でというのは捉えどころが無いと思います。
実施目標のなかで、一人一人が効率的な運営を行う、というのは当然のことですが、達成目標というのは、皆が共有の概念として持っている目標ですので、分かり易くなければいけない。1年経って、5%減ったね、良かったね、ということではなく、日々のプロセスの中で目標通りに進行しているかどうか、という定点チェックが絶対に必要です。プロセスの段階で、それが目標通り進んでいるか、それを一人一人が確認できているかどうか? という。
設定の仕方としてこれが適切かどうか。意図していることは分かる気がしますが、分母を決算額とするのが適当かどうか、というのはもう一度議論したほうが良いと思います。皆がはっきりとわかる、どうすればこの5%を達成できるのかということがわかる分母に対して、対象を、それを明確にすべきと思います。

[事務局]:ただいまご意見頂いた処につきましては、また内部で検討させていただきたいと思います。

[菊池委員]:管理費とか事業費まで含めるというのは、如何かなと思います。

[佐々木課長]:以前、菊池委員とお話したときに、管理費と事業費の節減の仕方というのは少し違っていて、全体を下げていくということを考えたときに、事業費に手をつけると、デフレスパイラルではないですけれども、益々サービスの低下にはしって観覧者数あるいは満足度が下がる、という話を頂いたかと思います。正直、資料の中にそういう部分が見えたかどうかわかりませんが、確かに毎年設定に苦慮しているところでございます。

[菊池委員]:そうであれば、前回、電力量を前年対比で減らすというミクロな設定をして行くと自分の首を絞めてしまうと申し上げました。それはやめた方がいいということで、管理費という全体の位置付けの中で無駄を分析するわけです。毎年同じもの、削減されるものを固定化して目標設定する必要もないし、自分達の中で効率的な運営を行うためにそれぞれが意識をしてやっていけば、どこに無駄があるかを必然的に体感する。するとそれが次年度の目標に反映されて、来年度はここを削減すればもっと効率的な運営ができるというような循環になっていくと、非常にスリムな管理に自主的になっていくと思います。削減項目の設定から優先すると、実感がなく、かつ実施目標とリンクしなくなっていくと思います。

[佐々木課長]:定点チェックという意識は欠けていたかと思います。資料として、年度末・年度前のタイミングで資料を提示しておりますが、1年間が終わって、結果を見て、そのイメージでやってみようかという話をしたのですが、その点は欠けておりました。
常日頃から、節減、費用対効果という意味から気にする部分はあろうかと思いますので、もう1回見直し検討させていただきたいと思います。

[菊池委員]:数字として表れるのはいいのですが、何が一番問題かというと、手応えです。この施設に携わっている人たちが、手応えとして、経費削減に自分達が取り組んだ結果こうなったという手応えを得られるかどうかが一番だと思いますので、それが得られるような設定をするのがいいと思います。

[小林委員長]:美術館の位置付けの一つ、学校教育や福祉の関連ではいかがでしょうか?

[黒岩委員]:教育の部分、学校との連携の部分でよろしいですか。
20~23年度にかけて、小学生が4000人、中学生が1000人以上増えていますよね。これだけ増えている部分の分析はどのようにされていますか?
学校との連携をこれからどんどん進めることで、より子ども達が美術に対する理解と親しみを深めて、美術館に来るという可能性は大いにあると思います。9ページの普及事業ですが、24年度版に比べると、鑑賞会は1学校減るから46校ですが、ワークショップが1回減らして9回、親子ギャラリーツアーが6回から4~5回と減らしていますよね。集客を増やしたいという狙いがあるにも関わらず、ワークショップ等の回数が減っているというのは、どの様に捉えているのかなと思います。
この中でどこが最も増やせるかと考えると、4番の出前授業ではないかと思います。学校から美術館に来るというのはなかなか難しい部分があるのですが、双方向の関わりで考えれば、学芸員の方に学校に来てもらって授業に関わってもらうという事はかなりできると思います。魅力的な鑑賞プログラム等を作っていただければ、1日1回来ればそれだけで40人、10回来れば400人ですから、学校との関わりが深まってくると思います。出前授業をもっと魅力的な内容のものを作っていただければ良いかなと思います。その辺りを含めて、状況をお聞かせいただきたいと思います。

[事務局]:23年度は「おもしろどうぶつ展」「トリック&ユーモア展」という、ご家族で楽しんでいただける企画が多かった年でした。そういったことが直接的に影響が大きかったと思います、また、開館以来実施している「中学生のための鑑賞教室」なども、数字を伸ばしている一因であると認識しています。
ワークショップ事業が減るということですが、経済部との関連により企画展が1本減ることで、それに付随した普及事業も予算的には削減されています。そこで数回減っているということがあります。親子ギャラリーツアーも展覧会に付随しますので同様に減っています。
出前授業に関しましては、これまであまり魅力的なソフト、作品を持っていくことができていない等がありましたが、現在、先生方のご協力をいただいて、アートカードの作成や、出前授業のプログラムについても研究を進めている段階です。これも近い将来には、増やしていくことができるのという目標で、進めてまいりたいと思います。

[黒岩委員]:展覧会が1回減った分、連動してワークショップとかギャラリーツアーも減ってしまったということですね。

[事務局]:何らかの連動しない方策を考えればよかったと思います。

[小林委員長]:例えば、浦賀中学校や走水小学校など周辺の学校は来ているのですか?
追浜の学校が利用するなど、実際に来ている学校の分布具合はどうでしょうか?

[事務局]:捕捉はなかなかできませんが、「中学生のための鑑賞教室」などでは、どこの学校からと聞いていますので、それを見ると、市内に広く分布しているように思います。感覚的なものですが、人口密集地域の子ども達が多いような気がします。

[小林委員長]:何らかの形で、美術を通してみる心の癒しみたいなものを、先生方の協力を得て、美術館に関心を持って集まれるような出前講座を考えていただければ、学校教育がより充実するのではないかと思います。

[事務局]:ご意見のとおり、魅力的なプログラムが大事だと思いますので、研究して、より良いプログラムが提供できるようにしたいと思います。

[柏木委員]:横浜美術館の場合は、学芸員以外にワークショップや鑑賞教育を専門にするスタッフが別にいて、相当な数の事業をこなしています。横須賀美術館では学芸員が5本から7本くらいの展覧会を行いながら、併せてワークショップや鑑賞教育の部分を担うという、いっぱいいっぱいな状況ではないのかなと思います。
事業計画は必ず予算とリンクしているもので、通常、粗いものだとしても、予算書がついてくるのではないでしょうか。鑑賞教育が1回減っているというものも企画展が1回減っているからという説明があって、経済部の企画展のことも説明がありましたので、そこに関しては理解しました。事業計画が立てられるということは必ず予算書がある。それを合わせて見ることによって、事業が実際にできるかできないかということを含めた検証できると思います。精密なものは必要ないですが、事業計画を検証する場合は何がしかの形で予算書がつくべきだと思います。
冒頭の事業計画全体の説明のところで、美術館の事業計画は必ず横須賀市の文化政策の枠組みの中で組み立てられるはずなので、美術館を市の都市資源としてと書いてありますが、市は美術館をどのような都市資源として考えているのかが前提にくるのだと思います。
観光資源と考えているのか、文化資源として考えているのか、そこがはっきりと前段として理解できないと、美術館を横須賀市としてはどう考えているのかというのがあって、それとリンクして、事業計画があるものだと思います。その点について、書く必要はないかもしれませんけれど、説明をしていただけるともっとわかりやすいと思います。
美術品の収集のことについてですが、購入予算はどこの自治体も厳しいと思いますが、関係部局に努力していただいて、購入予算を少しでも確保して購入を進めていかないと外部から作品のオファーが来なくなりますよね。美術館のコレクションを充実させることは基本的な機能なので、僅かでもいいので購入できるように働きかけるべきだと思います。
美術品の収集に関しては、数値化しづらいのですが、例えば、寄贈・寄託は年間どれくらいの案件があるものでしょうか?

[事務局]:その年によって違いますが、平均10件前後かと思います。今年度はそれより少なかったかと思います。

[柏木委員]:寄贈・寄託の申し出があるのであれば、収集のための委員会を必ず年に1回開く、というような数値目標は立てられるものだと思います。こういう作品を何点というような具体的な目標は言えないと思いますが、美術館として収集活動を続けていくという意思表明にはなると思いますので、目標数値の書き方は可能かもしれません。

[事務局]:以前、「収集委員会を1回開く」という目標を立てたことはあるのですが、「これはやればできるのではないか」というご意見をいただき、外した経緯があります。

[柏木委員]:過去にそういう経緯があるのであれば、検討されたということでいいかと思いますが、事業計画は美術館の意思表明でもありますので、年1回は必ず収集の委員会を設けるということを謳うことは必要なことではないかと思います。

[事務局]:予算ベースで考えますと、収集の委員の方の経費、運搬・修復費等は予算化されています。それに基づいた事業計画という考え方でいけば、そういうことも書いておくことはいいのかなと思います。

[小林委員長]:貴重な意見をいただいていますが、他にはいかがですか。

[久保委員]:柏木委員と関係するところですが、25年度に限ったことではなく、横須賀美術館の事業計画は、ある意味、矛盾を抱えていると思います。なぜかと言うと、美術館の質を高めていくということでありながら、一方で作品を購入するお金がありません。
横須賀・三浦半島に所縁のある作家でと言いながら、芸術性の高い、お客様を呼べるようなものを大々的にできれば。
それに越したことはないのでしょうが、そうはならない前提があって、その上で質を担保しながら効率的な運営を求められる。具体的にはコストを減らす、もしくは収益を上げなさい、入場料を増やしなさいということですね。ある意味、矛盾を感じます。
箱はあるのだから、最低限のコストは避けられないと思います。どうしてもお客様を呼んで入場料を増やすしか方法はないんだと思います。経済部の主催であろうが、商業撮影やロケであろうが、本来美術館の仕事ではないとしても、これを受けらないと生きていけないという側面があると思います。
美術館としてあるべき姿と、折り合いを着けてやっていかないと、どっちつかずになるのかなと思います。多少批判されようが、ラルクのようなものをやって、結果としてお客さんが来て、お金の取り方として良かったのかなというのは検討する必要があると思いますが、もっと美術館にお金が落ちるような仕組みでやればいいと、個人的には思います。
箱がある限りは、お金を稼がないと仕方がない、営利事業ではないけれども、こういう状況ならば全部呑みこんでやればいいと私は思います。
ただ、経済部がやっているから、美術館主催ではないというのは違います。
やる限りは全て横須賀美術館の責任でやっているもの、というスタンスでやっていただきたいと思います。批判をされてでも、コンセンサスを得た上で、こういうこともやっていく、本来の美術館の機能もきちんとやっていく、運営上の問題としてどうしてもやらなければならない、そういったものも併せ呑むということで、足元をしっかり固められてはどうかと思います。
美術館である限り、美術館の本質を失ってはいけないが、それだけで食べていけるやさしい状況でないのはどこも同じだと思います。
箱がある限り、コストがかかる限りは、それを飲み込むだけの収入なり、利益なり、経済的なものを得なければ続けていくことはできない。その前提でやっていくのであれば、何かしらもっときちんとやるべき。
いろいろな批判があったとしても、批判は甘んじて受けて、精査をして、受けてもいいからやるというものはやればいいし、修正するものは修正するということで、どっちつかずのものは矛盾をはらむのは仕方ないが、併せ呑むのであれば、併せ呑むとはっきり書いた方がいいのではないかと思います。
コスト的なものを明示して、その上で時間も短くするならそれでもいいし、その代わりこういうこともやります、学校にも行きますというような、具体的に書ける部分は書いて、こういう姿勢ですという美術館の姿勢が具体的に伝わるのではないか。そうしないと、どっちにするの、どっちを取りたいのというのが続いてしまうのではないかと思います。
苦しい状況はよくわかっていますので、苦しいながらも続けて行くには経済的な効果を上げるしかない、それを実現するために美術館なりにやっていけばいいのではないかと思います。
三浦半島の事業者はどこも同じなので、協力できる部分は協力して、お客さんを呼べるように、ドラマのロケで紹介してもらったり、ラルクで横須賀に所縁のない人がたくさん来ても、その中にまた来ようと思う人が10%でも何%でもいてくれれば、食事をしてくれたり谷内六郎を見てくれたりすれば良いではないか、というくらいの気持ちでやれば良いと思います。
ただ、美術館でやることは全部美術館というところはぜひ統一していただきたいと思います。

[小林委員長]:久保委員から一つの考え方、位置付けをいただきました。

[佐々木課長]:心の内を読まれているようなご意見で身にしみました。悩んでいる部分が資料に表れているのかなと思いまして、反省しています。
おっしゃる通りだと思います。ある方向を示して、優先順位、重点という部分だと思います。そこはきちんと、どなたが見てもわかるように明記できればと思います。
評価の結果、事業計画であったり、自分自身、美術館の職員の運営のチェックをするツールの一つでもありますが、一方で、外に示すことで、美術館がどういうことをやろうとしているのかという広報をする役割もあると思います。
そういう意味で、外へのメッセージ、わかるような書き方をしていく、時間がかかるかもしれませんが、内部での議論をもっと詰めて、はっきりさせていきたいと思います。
商業撮影については、まさにそういうつもりです。収入を得られるものがあれば、いろいろなことを試していきたいと思いますし、商業撮影は、開館から話題になっていましたが、手続きが煩雑なこともあり事業者が増えていかなかったのですが、簡素化することができ、経費をいただけるようになっています。そういったいろいろなことを考えながら、収入を上げていくことも考えていくべきということで、書かせていただきました。参考にさせていただきます。ありがとうございます。

[小林委員長]:他にありますか。
それでは、各委員から出た意見をもう一度整理していただいて、25年度計画案をまとめていただければと思います。

(閉会)