美術館について

美術館評価制度 

横須賀美術館評価委員会(平成21年度第1回)

日時:平成21年6月25日(木)午後3時~4時40分
場所:横須賀美術館 会議室

1 出席者
  委員会 委員長  小林 照夫  関東学院大学教授
      副委員長 山梨 俊夫  神奈川県立近代美術館館長
      委 員  菊池 匡文  横須賀商工会議所事務局長
      委 員  佐倉 美知子 市民委員
      委 員  杉戸 美和  横須賀市立野比中学校教諭
      委 員  松﨑 正良  観音崎京急ホテル社長
       ※水島祐子委員は欠席

   事務局 教育委員会生涯学習部長   外川 昌宏
      美術館運営課長      奥田 幸治
      美術館運営課主査(学芸員)石渡 尚
      美術館運営課主査     佐々木 暢行
      美術館運営課(学芸員)  沓沢 耕介

2.議事
(1)横須賀美術館評価制度について
(2)平成21年度の会議日程について
(3)会議の公開について


3.会議録(要約版)

[事務局]
・委員の委嘱について説明
・委嘱状の交付

委員の自己紹介
[菊池委員]
・集客施設としての美術館は地域経済の活性化に影響力をもつ。
・美術館が地域にある意味、どうしたら愛される施設となるか、について意見を述べたい。
[小林委員]
・美術の世界とは縁遠いが、横須賀に長く在住している。
・大学の評価制度に関わっているが、近年は自己評価の方法が厳しくなってきているという感想を持っている。
[佐倉委員]
・前回も応募し、落選したが、その間、横須賀美術館のデータや、他の各地の美術館について関心をもって見てきた。
・景色がよいと感じている。多くの市民がまた行ってみたくなるような美術館となるように意見を述べたい。
[杉戸委員]
・子どもたちが芸術に関心を持ち、感性を育てるうえで美術館での体験は大事な機会となっていると思う。
[松﨑委員]
・油壺マリンパーク、観潮荘および観音崎京急ホテルの三社の社長を兼務している。
・美術は苦手科目。しかし、地域の子どもたちとの関係でいえば、油壺マリンパークと共通点がある。
[山梨委員]
・美術館で一番大事なのは質のいい美術を見せていくことだが、それだけでなく、近年は美術がいかに良いものかと、いうことをより広い範囲に訴えかけることが求められている。そのなかで、美術館の活動を外側から見ることが必要とされてきている。
・横須賀市でも、美術館の開館前から、美術館の活動を市民に理解してもらうことを目的のひとつとしてこの委員会を作ったのだと思う。だからまずは、この委員会が、美術館活動について思うところをフランクに話し合える場であるように願う。
[事務局]
・委員長・副委員長の選任
・横須賀美術館評価制度について説明
[菊池委員]
・「資料6」「①美術を通じた交流の促進」の、「a.年間来館者数」と「b.年間観覧者数」の違いは?
[事務局]
・「観覧者数」は、展覧会をご覧いただいた方の数。「来館者数」は、建物(本館のみ)への出入りをオートカウンターで計測した数。
・「来館者数」については、無料ゾーンのみの利用者も含めた指標と考えている。
[菊池委員]
・たとえばレストランだけに来た方というのは「来館者」に入る、ということ?
[事務局]
・レストラン入口にはカウンターがついていないので「来館者数」には入っていない。
・オートカウンターは3箇所設置されており、そのうち美術館正面エントランス、屋上ペントハウスの入口の2箇所で計測したものを集計している。谷内六郎館の入口の数はダブルカウントとなるため集計に加えていない。
[松﨑委員]
・「アクセス満足度」は京浜急行の事業ともたいへん関連が深い。バスが遅れることが多いのでこの値は低いのではないかと懸念する。
[事務局]
「①-e.アクセス満足度」と、「③-a.館内アメニティ満足度」は、今年度から調査を始めたところで、今回は数字を示していない。次回委員会からは随時提示していきたい。
[山梨委員]
・達成目標・自己点検項目のなかに、建物などの維持管理に属する項目が抜けているのではないか。そういう部分をどうするのか、委員会で議論をすべき。
・「資料4 横須賀美術館評価システムの全体像」の図中、評価委員会の位置がおかしい。【美術館運営課←評価/改善→評価委員会】という関係であるべきではないか。
・同じく「資料4 横須賀美術館評価システムの全体像」の図中、美術館と教育委員会・市の関係は双方向の矢印のみでどういう関係なのかわからない。
[事務局]
・図中の評価委員会の位置についてはご指摘のとおり修正する。
・横須賀市と教育委員会、美術館の関係について。美術館運営課は教育委員会の1セクションであり、予算要求する際などには、教育委員会として横須賀市に向かって要望し、または指示をされる関係にある。外部評価をされるうえでは、市と教育委員会、美術館運営課は一体のものと考えていただきたい。
[山梨委員]
・自分も行政のなかで仕事をしているのでその点よく理解している。そういうことではなく、この評価制度の中でどうなっているのか。
・つまり「資料7 平成21年度横須賀美術館事業計画書」に挙げられた項目と「点検項目」が一致していない。「事業計画書」の「5 運営事業」、「6 施設維持管理」にあたる部分は「点検項目」に見出せず、評価についてそれらをどう考えているのかわからない。
[事務局]
・ご指摘の通りで、「事業計画書」は21年度予算の主要な部分を網羅したもの。「目標」と「自己点検項目」は、これまでの委員会の議論も踏まえて、最優先すべきものに限定している。どのように評価に組み込むかということも含めて、今後検討していきたい。
[山梨委員]
・今後協議していくことでよいと思う。菊池委員もさきほど運営的な面からアドバイスをしたいといっておられたし、そういう項目は必要になってくると思う。
・「④知的好奇心の育成―自己評価の方法」のなかにある「評価委員による閲読」というのは自己評価とはいえない。
・「事業報告書」にある担当者の反省・感想というのが自己評価に相当する。ここでは反省に偏っているようだが、自分たちのやったことを積極的に評価し、どんなことをしているか社会にアピールする姿勢も重要だと思う。
[事務局]
・「事業報告書」について、担当者だけでなく、他の学芸員から見た参考意見を付してはどうかというアイデアもある。報告書の書式についても改善を検討したい。
[山梨委員]
・内部で見る(評価する)ことの繰り返しが実績となると思う。
[小林委員長]
・大学でも自己点検評価がたいへんなボリュームになっていて、普通の業務がおろそかになるくらいである。問題点、改善点はポイントがわかりやすく示されるようでないと、評価をする意味が薄れていってしまう。項目を細分化していくよりも、問題点を絞ったほうが、明確になるのではないか。
[奥田課長]
・(もっと積極的な評価をという求めに対して)市役所全体の事務事業評価に携わった経験上、外部委員による評価では、自己評価が甘い、という非難を受けることが多かった。
・評価を徹底しようとすると、そのための仕事が増え、かえって業務改善ができなくなってしまうということは、横須賀市全体の外部評価を行ううえでも経験している。しかし、1次評価を事務局がまとめ、外部委員に2次評価をしていただく基本姿勢は変わらない。
・個人的に、評価項目の数が多いような気がしている。抜けている部分は委員会で今後議論をしていただきたいが、現在提示したもので試行することは認めていただきたい。 [小林委員長]
・評価指標の数値をどう設定するかは重要。たとえば「①-c.市民/全体の比率」を「40%に近づける」とあるが、その数値は何を意味し、その達成はどんな目的を果たしたことになるのか。あるいは「①-a.年間観覧者数」「10万人」という数字はこの施設、この状況にとって満足な数字なのかどうか。「企画展の満足度」「70%」は他の美術館、あるいはいままでの状況と比べてどんな位置なのか。今後70%を75%にするにはどういう努力が必要なのか。
[奥田課長]
・ご指摘の通り、評価指標の設定は重要。
・年間観覧者数は企画展ごとに目標を立てた結果の合計となっている。
・たとえば市民の割合が40%がいいのかどうかというのは、公立美術館としてはどうか、都市近郊型美術館としてはどうか、など、美術館のあり方自体を問うことでもある。
・今後評価指標自体についてもご指摘・ご検討をいただき、精査したい。
[山梨委員]
・点検項目の数は必ずしも多くない。これまで2年間の委員会で、「評価のための評価」のような、過剰な事務量を強いるものにならない程度に絞った結果このくらいになっている。
[佐倉委員]
・観覧者数などの月別の数字を出すことは可能か?
・閑散期に人の集まりそうな企画展を行えば、平均的な集客が得られると思う。
[事務局]
・月別の資料についても提示する。
[小林委員長]
・イギリスでは、人口5万人以上で立派な都市であり、当然のように博物館・美術館が設置される。イギリスの子どもたちは年中本物の絵を見て学習して、感性を育てていくので、美術館・博物館は非常に大事な機能を持っている。横須賀は40万人の人口があって立派な中核市であるのに、この美術館どうのこうのと問題にされる。
・横須賀らしい特色ある評価基準を設けることで、よりよい美術館になると思うので、各委員のご意見によって次代へと積み重なるような評価制度としたい。
[事務局]
・平成21年度の会議日程について説明
[菊池委員]
・22年2月の時点でする2次評価は、1月までの活動について行うとあるが、評価指標の数値は4月~1月の10ヶ月分ということか?
[事務局]
・目標は4月~3月の数値として挙げている。2月の委員会では1月までの数値によって(ある程度の見込みによって)概観していただくこととしたい。
・厳密には、正確な数値が確定し、公表できるのは決算委員会後となる。
・けれども、来年度の5月頃行われる委員会では、今年度分の取りまとめた数値を提示できると思う。
・評価の結果を予算に反映していくにも、年度区切りがあるため1年半後になってしまう。
[事務局]
・会議の公開について説明
[小林委員長]
・会議の日程はどのように周知されるのか?
[事務局]
・毎月25日発行の「広報よこすかお知らせ版」のうち、「傍聴できます」というコーナーへ載せる。それと横須賀美術館のHP。それから市役所本庁舎1階の情報コーナーへの掲示。
[小林委員長]
・ほかにご意見は?
[菊池委員]
・「資料6」「③-a.館内アメニティ満足度」について、19、20年度は未調査となっているが21年度は調査をしているのか?
[事務局]
・21年度からアンケートの項目に加えている。
・具体的には、「清掃が行き届いており、清潔感がある。」「トイレ・授乳室は利用しやすい。」(ほかに「館内は明るく開放的で、よい印象を受けた。」「館内は静かで落ち着ける環境である。」「休憩する場所がじゅうぶん用意されている。」)などさまざまな項目について点数をつけてもらっている。そうした項目の最後に、「全体的にみて、館内では気持ちよく過ごすことができた。」という項目を設けており、その満足度(5点満点で4、5と答えた人の割合)を指標としたいと考えている。他の項目については、改善の優先順位を検討する材料としたい。
・他の項目の調査結果についても、委員会での参考資料として提示したい。
[菊池委員]
・「③-b.スタッフ対応の満足度」が低下傾向にあるが(19年度78.9%/20年度69.6%)これは集客施設としては致命的な問題。
・この結果に対して21年度はどのような改善がされているのか、同時に提示すべき。
[事務局]
・①から③については(一覧性を持たせるため)数値しか示していないが、数値について説明するには参考値や、それについての自己評価などが必要と認識している。今年度どのような対策を講じているかについてもレビューし、提示する。
[菊池委員]
・今のところ判断の基準となるような資料が示されていない。
・委員が最終的に評価するのはどこか、ということ、前年度の反省はどのように生かされているのか、ということがあらかじめわかっていて、最終的には細かい資料が示されたうえで、目標が達成されてるのかどうかを評価する、ということにしないと、結局非常にドライな評価になってしまって、次の運営につながらない。
[小林委員長]
・評価指標を現実的でない高いところに設定してしまうのでは困る。
・「アメニティ」のような概念語は一見わかりやすいが、美術館としての「アメニティ」とは何なのか。言葉が独り歩きしないように、アンケートの際には注意すべき。
・自己点検・自己評価はこれからはじまるところなので(未完成なのはしかたがない)、それが着実に市民に向かったり美術館の向上につながるよう少しずつ補ってもらえればよい。
[杉戸委員]
・「学校との連携」のところに「教師との緊密な連携によって」とあり、まったく同感である。しかし実行されているかについてはすこし疑問を感じる。
・教育現場と美術館とで、こういう子どもたちを育てたいという視点を共有しなければならない。
・教員からのアプローチも必要だが、美術館からもしっかりアプローチしてもらいたい。
[小林委員長]
・議事を終了し、進行を事務局に返します。
[外川部長]
・学校教育では評価指標が学習指導要領できっちり規定されているが、美術館の評価にはそれがない。いま提示しているのは、アンケートの結果つかんだものだが、それが良いものといえるのか実はまだわからない。
・言葉で書いたりする資料にはまだ検討の余地があると思っている。
・評価しっぱなしではなく、改善につなげなくてはならない。委員には忌憚のないご意見を期待する。
・19年度、20年度の資料でお渡しできるものはお渡ししていきたい。ただ、決算以前なので情報の管理については充分ご配慮いただきたい。
[奥田課長]
・委員には、展覧会や教育普及などの美術館の事業を、できるだけ実際にご覧いただきたい。
・開催通知等を送付させていただく。ただし、交通費等は支給できない。ご容赦いただきたい。