横須賀美術館 YOKOSUKA MUSEUM OF ART
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■美術館の建築について■ →美術館TOPへ戻る
1.設計のプロセス
横須賀美術館の設計者選定は、建築案ではなく実績や面接で選ぶQBS(資質評価)方式によって行い、山本理顕設計工場が選ばれました。設計事務所、市の美術館開設準備室、建築課・設備課の担当者と、時によりさまざまな分野の専門家がゲストとして参加する「プロジェクト会議」と名付けられた月2回の打ち合わせを行い、設計をすすめていきました。何もないところから使う者とつくる者が一緒になって考え、市内施設での収蔵品展や建設予定地でのワークショップなどプレイベントの開催と平行してプランを練っていき、2006年7月に竣工しました。
2.建物の特長
①景観と一体化した外観
美術館の敷地は、後ろ三方を森に囲まれ、北東が海に面しています。東京湾の眺望がすばらしく、「地形を利用して景観と建物とを一体化させたい」というのが、当初からのコンセプトでした。海側から見た時に背後の森への視線が抜けるよう、また、塩害対策からも、ボリュームの半分を地下に埋めた低層の建物ができあがりました。敷地の海側は、なだらかな斜面でそのまま海につながるようにし、地上に出ている建物部分は森に隠れるように建っています。また、山側から下りてきた散策者は、地続きで屋上広場へと誘われ、眺望を楽しんだ後、建物の中に自然に足が向くようなアプローチとなっています。

環境全体が美術館です
②滞在型美術館としてのアクティビティ
海側からのメインアプローチは、前面道路から建物正面を臨み、海の広場脇のスロープを上がり正面玄関からエントランスホールへ。一方、山側からのアプローチは、観音崎公園散策からの利用を念頭に、山の広場・屋上広場を経由してペントハウスから館内に入ることができるようになっています。二方向から出入りでき、通り抜けできるようにすることで、滞在型の美術館として、単に展覧会をみに来るだけでは終わらないアクティビティを目指しました。観覧券を持っていない方でも気軽に利用できる無料の空間を多く設けたり、展覧会を目的に来た方も途中で外に出て、展示室に再入場できるようにしていますので、周辺散策とあわせてお楽しみいただけます。
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③ガラスと鉄板のダブルスキン構造
本館展示棟は、ガラスと鉄板によるダブルスキン(二重皮膜)で覆われています。開口部の自由度と塩害対策を考えると、外側には透明なスキンが必要なので、外皮には錆や経年劣化が少ないガラスを採用。一方、内皮には溶接した鉄板を用いることによって、一枚の殻で全体を包み、そこに開けられた穴の大きさや数で光の量を調整しています。このことにより、目地がない平滑な面が続き、独特の雰囲気を持つ内部空間ができあがりました。展示用には閉じた空間を用意しつつも、エントランスホールや吹抜のギャラリーでは自然光を自由に取り込み、開放感のある空間を実現させ、美術館が必要とする様々な光の状態を制御しているのがダブルスキン構造なのです。
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④吹抜の回廊
エントランスホールへのアプローチは、眼下に展示された作品を見ながら地下をまたぐブリッジを渡る、空間体験としても楽しいものとなっています。内皮の内側は、壁と天井が連続して吹抜空間を覆う、鉄板という素材ならではの入り隅のない天蓋のような仕上げです。この天蓋空間の中は、さらに入れ子状の構成になっており、真ん中に展示室・収蔵庫などが島状に配置されています。また、この島状のボリュームと内皮との間のお堀のような空隙が、吹抜の回廊として地階所蔵品展示ギャラリーを構成しています。ここは、天井高が約12m、幅が南・西・東側で約4m、北側で7.5mの大空間であり、美術館で最も特徴的な空間となっています。
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⑤丸穴の開口部
エントランスホールや吹抜の地階所蔵品展示ギャラリーでは、鉄板の天井や壁に丸穴を開けることで、光の分量や熱、視線をコントロールしています。直射光が入らない北側は、穴を大きくし数も多く配置。一方、南側は穴が小さく数も少なくなっています。これにより空間に明暗が生まれ、北側に行くにつれ、より明るい空間となっています。また、1階企画展示室を移動していくと、展示室と展示室の間の「ギャラリー」と呼んでいるスペースから丸穴越しに海の景色を見ることができ、展示室間のちょっとした緩衝空間となっています。他の丸穴からも周囲の緑や空の色などが見え、館内にいながら外の天気や自然を感じることができます。
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⑥ロゴマークとサイン計画
グラフィックデザイナーの廣村正彰氏による海の写真を使った「横須賀美術館」のロゴマークと、ヒト型のピクトグラム(単純化した図による表示)によるサイン計画は、どちらもパッと目をひくものとなっています。ロゴマークの海は、美術館の前に広がる東京湾の写真。海の近くの美術館であることが一目見てわかるようなVI(ヴィジュアルアイデンティティ)を、ということで採用されました。このVIは、美術館の表札とも言えるアプローチ脇の大きな館名看板にも使われています。また、館内のサインは、特徴あるヒト型ピクトグラムが各場所への案内を担っています。単に場所を示すだけではなく、階段をのぼる人や本を読む人をかたどるなどそこでの行動を表し、少しだけ人格があるようなあたたかみのあるものとなっています。
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⑦開館・閉館時の音楽
横須賀美術館の開閉館音楽は、サウンド・アーティストの鈴木昭男氏が、横須賀のまちと横須賀美術館を感じながら、楽器を操りつくってくれたものです。鐘のような音、鯨の鳴き声のような音、遠くから聞こえる風のような音。横須賀美術館のための音楽は、さまざまな音がつまって一つの曲になっています。美術館の建物と共鳴しながらどう響くのか、美術館の開館・閉館の時には、目を閉じて耳を澄ましてみてください。横須賀美術館でしか聴くことのできない音が鳴り響きます。