中村岳陵(1890-1969)は静岡県下田市に生まれ、10代のうちに上京し、琳派の流れを汲む野沢堤雨や土佐派の川辺御楯に師事し、伝統的な大和絵の技法を習得しました。その後、東京美術学校日本画選科を卒業し、紅児会や赤曜会を通じて今村紫紅をはじめとする日本美術院の作家たちと交流するなど、1950(昭和25)年に日展へ活躍の場を移すまでは、院展を活躍の場としました。
伝統的な大和絵を出発点とする岳陵ですが、その枠にとらわれず、様々な分野の作品を数多く残しています。有職故実を見事に表現した歴史画や、近代的な女性を描いた人物画、琳派風の動植物画、写実的な風景画など、その幅の広さは画家・岳陵の魅力の一つといえます。しかし、つねに創作の根底には自然、古典、写生という揺らぐことのない指針がありました。古典作品を研究し、自然をあるがままに見つめ、ひたすら写生を繰り返す―強い信念を持ち、一所に安住することなく新機軸を打ち出し続けた魅力を、約50点の作品を通じてご紹介いたします。 |